遠野物語の世界
昨年八月の末自分は遠野郷に遊びたり。花巻より十余里の路上には町場三ヶ所あり。其他は唯青き山と原野なり。人煙の稀少なること北海道石狩の平野よりも甚だし。或は新道なるが故に民居の来り就ける者少なきか。遠野の城下は即ち煙花の街なり。
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9月7日(土)、岩手県遠野市を訪れた。柳田國男の「遠野物語」を学生時代以来に読み返し、遠野へ行ってみたくなったので。私にとって遠野を訪れるのは今回が初めてである。
冒頭の文章は「遠野物語」の序文の一部。花巻と遠野の間にある町場三ヶ所とは土沢、宮守、鱒沢を指す。東北本線は開通していたがまだ釜石線は建設されていないが新道が開通していた。「人煙の稀少なる」とは旧道沿いの集落を避けて新道が建設されたからであろうか。柳田は花巻駅から人力車に乗り、そんな新道を通って遠野を訪れた。「煙花の街」とはたくさんの竈から立ち上る煙が多い活気ある街の意味である。
江戸時代初頭、盛岡藩主・南部利直は仙台藩と隣接する遠野を重視し、八戸を統治していた八戸直義(南部直義)を遠野に転封させ、鍋倉城主として1万2000石を与えて統治させた。直義は家系は以後遠野南部氏として明治維新まで遠野を統治し、遠野は安定して発展した。「青き山と原野」の続く新道を人力車に揺られて遠野に到着した柳田は遠野の華やかさにさぞ驚かされただろう。
JR釜石線 遠野駅
まずは駅前の観光案内所で情報収集して「とおの物語の館」へ
「とおの物語の館」は「柳田國男展示館」「昔話蔵」「遠野座」からなる。「遠野座」では語り部から遠野に伝わる物語を聴くことができる。
「とおの物語の館」は入館料510円。他に遠野市内観光8施設のうち任意の5施設を利用できる市内観光共通券1350円もある。ここで共通券を購入した。
「とおの物語の館」には柳田が遠野で滞在した旅館(高善旅館)が移築されている。そしてそれは柳田に関する資料館ともなっている。
柳田は明治8(1875)年、飾磨県神東郡田原村(現:兵庫県神崎郡福崎町)で生まれた。東京帝国大学で農政学を学んで農商務省の高等官僚となり、講演旅行などで東北などの農村を巡るうちに次第に民俗学的なものへの関心を深めていくようになった。明治41(1908)年、遠野出身の新進作家・佐々木喜善と知り合い、そして東京で互いの自宅を訪問し合いながら佐々木の話を聞き取って「遠野物語」は執筆された。柳田が実際に遠野を訪れたのは明治42(1909)年8月23日夜で、26日に出立している。
柳田が確立した民俗学は現地調査主義を特徴とする。歴史学においては文献資料を最重視するが、文献資料は為政者の視点に偏る傾向があり、また飢饉や一揆などの事件や災害は記録されても一般民衆の平穏な日常が記録されることは殆どない。だから文献資料のみに依拠しては一般民衆の生活文化史を解明することは難しい。それゆえに柳田民俗学は現地でフィールドワークして資料収集し、話は古老から聞き取ることを重視する。
「遠野物語」は上記の通り東京で聞き取りして書かれた。その時、柳田36歳、佐々木25歳である。現地で古老から聞き取りすることを重視する後の柳田民俗学の原則から外れており、まだ柳田民俗学は確立されていなかったことがわかる。柳田民俗学もある日突然成立したのではなく、「遠野物語」から徐々に発展していったと言えるだろう。
「とおの物語の館」の「昔話蔵」。こちらは様々な日本の昔話に関する展示がなされていた。
南部神社は南北朝時代の創建で、鎌倉幕府の御家人であった代々の南部氏を御祭神としている神社である。この先が鍋倉公園で、鍋倉城(遠野城)があった。この日は南部神社ではなく遠野市立博物館が目的。
遠野市立図書館の3階が遠野市立博物館となっている。遠野市立博物館は大人310円。共通券利用可。
ここは「遠野物語」で描かれているかつての遠野の資料がたくさん展示されている。明治時代の遠野の街並みを再現した模型もなかなかリアルで楽しかった。映像資料も豊富で、これを全部見ていたら一日は簡単に過ごせるだろう。もう少しここで過ごしたかったが、それでは遠野の街を巡る時間がなくなるので13時にはここを出た。残念ながら内部撮影禁止。
13時半頃、遅めの昼食。最近蕎麦ばかり食べているような気がしてきた。まあ私は一日三食蕎麦でも良い蕎麦好きなので。
駅前の観光案内所に戻り、レンタサイクルを借りた。レンタサイクル 8:30~17:00 3時間620円、以後1時間100円。
自転車を借りたのが14時ちょっと前で、17時までには返さないといけない。つまり3時間で回れる範囲で完結させないといけない。自転車自体は正直なところ乗り心地はイマイチ。自分の折り畳み自転車の方がよっぽどマシと感じた。しかしこの日は自分の自転車を持ってきていないので。
遠野には石碑が多い。
「狐の関所」
「遠野物語」第60、94、101話に、「遠野物語拾遺」第188~208話に狐に関する話が収録されている。「狐の関所」は「遠野物語拾遺」第205話。
真言宗豊山派 法門山福泉寺
拝観料は300円。共通券利用可。
福泉寺は大正元(1912)年創建の比較的新しい寺院である。日本最大の木造大観音像で知られる。
観音堂
多宝塔
五重塔
カッパ淵
「遠野物語」第55~59話に、「遠野物語拾遺」第178話に河童に関する話が収録されている。
曹洞宗 蓮峰山常堅寺
カッパ淵に隣接して常堅寺がある。カッパ淵に住むカッパが常堅寺の火災のときに火を消して狛犬になったという不思議な伝説を持つ。
安倍貞任は奥六郡(北上川流域)を中心に陸奥を支配した一族で、前九年合戦で源頼義に滅ぼされた。だが安倍氏の子孫を名乗る一族は少なくない。津軽から道南、秋田県北部を支配した安東氏(三春藩主・秋田氏)も安倍氏の後継を名乗っている。
日帰りで「遠野物語」の世界を巡るのは無理があったようだ。市内観光共通券は5施設りようできるが3施設しか回っていないので残ってしまった。しかしこの共通券は有効期間が3ヶ月あるので、有効期間内にまた来てみたい。
東北三十六不動尊霊場
第1番札所 慈恩宗 瑞宝山本山慈恩寺 平成29年8月14日巡礼
第3番札所 天台法流 高龍山光明院 令和元年8月25日巡礼
第4番札所 天台宗 上埜山大樹院 平成30年8月19日巡礼
第5番札所 真言宗豊山派 新山龍覚寺 平成30年1月3日巡礼
第6番札所 羽黒山修験本宗 羽黒山荒沢寺正善院 平成30年1月3日巡礼
第11番札所 真言宗智山派 日王山玉蔵寺 平成29年5月2日巡礼
第12番札所 真言宗智山派 医王山遍照院 平成29年5月3日巡礼
第13番札所 真言宗智山派 古懸山国上寺 平成29年11月4日巡礼
第14番札所 高野山真言宗 神岡山大円寺 平成29年11月4日巡礼
第15番札所 真言宗智山派 金剛山最勝院 平成29年11月4日巡礼
第17番札所 真言宗智山派 成田山青森寺 平成29年11月5日巡礼
第18番札所 全仏山青龍寺 平成29年11月5日巡礼
第20番札所 真言宗智山派 玉王山長根寺 平成29年9月10日巡礼
第21番札所 真言宗豊山派 法門山福泉寺 令和元年9月7日巡礼
第23番札所 天台宗 真鏡山達谷西光寺 平成29年8月13日巡礼
第28番札所 臨済宗妙心寺派 青龍山瑞巌寺五大堂 平成30年1月1日巡礼
釜石線
この記事へのコメント
遠野物語、いいですね。
私も昔読んだことあります。
めっちゃ行ってみたいです。
カッパも見たい〜。
その遠野へ行かれましたか。ここにある「とおの物語の館」は、かなり様々な展示があるのですね。じっくり見たいところですね。
やはり「昔話蔵」に興味が行きます。こちらは、不思議な昔話の宝庫ですね。
カッパ淵は実に微笑ましいです。
川のせせらぎを聞くと、カッパさんが出て来そうですね。
愛されキャラのカッパさん、出て来てほしいですね。
いい旅続きますね。
恥ずかしいです。
でも 彼女の歌を聞きながら 行ってみたいな~ と
ずっと思っていました。降魔成道さんの この記事を拝見して
ぜひ 訪れたいと 改めて思いました。
所ですね。昔話蔵はほのぼのします。
遠野といえばカッパですね。カッパ淵は
行きましたよ。残念ながらカッパさんには
会えませんでしたけど。。(笑)
トトパパさんも遠野物語を読まれましたか。なかなか興味深い作品でしたよね。実際に遠野を訪れてみたところ、物語の雰囲気が随所に残っていて楽しかったですよ。私もカッパに会ってみたいです。
いいですね。遠野物語と言うと、幼い時に
神隠しに合ったと思われた女性を、
何年も経ってから山の中で見かける話が印象的です。
神隠し、(河童による)水難事故など、
昔は自然の中で生きて行くのが大変だったんでしょうね。
「とおの物語の館」はなかなか魅力的な施設です。語り部のお話も伺ってみたかったのですが、時間的都合で断念しました。ここや市立博物館をじっくり見て回っているだけで一日を使うことになりそうです。さらに遠野物語に書かれている関連各所を巡るとなると、一週間くらい必要かも知れません。リタイアしたら一週間くらい滞在して歩き回ってみたい場所です。
待ちます、耐えます、信じます ですね。
是非一度遠野を訪れてみて下さい。
私も近いうちに再訪する予定です。
残念ながらカッパさんに会うことが出来ませんでした。
そうそう、駅前の観光案内書で、「カッパ捕獲許可証」を取得することができます。有効期間は1年で、毎年更新しないといけませんよ。
私もカッパさんに会えませんでした。次回こそ、なんてね。
高善旅館は木造三階建の旅館だったそうで、遠野は花巻と釜石を結ぶ要衝として結構裕福な街だったようです。高善旅館を見て、それも納得できました。
遠野物語には娘さんが神隠しにあった話がいくつかありましたね。山男に攫われて女房にさせられた話とか。遠野物語には山人、天狗、山神など色々と出てきてそれが何であるのか不明ですが、修験者やマタギ、外国人などがその正体なのではないかと解説している書を読んだこともあります。妊婦がカッパの赤ちゃんを産んで殺した話などもいくつかあり、それは未熟児や先天的障碍児だったのではないかなどの話を読んだこともあります。遠野物語に描かれている世界を解明することにも興味がありますが、物語は物語として楽しむだけでも良いような気もしますね。
河童伝説や馬に恋した悲しき乙女
神隠しなどの伝説を思い出されます
楽しく拝読させていただきました
柳田國男の「遠野物語」、懐かしいです。私はほんの少ししか読んでいませんが、河童伝説や妖怪など不思議なお話が多いですね。
何よりも「遠野」という言葉の響きが大好きです♪
「とおの物語の館」という資料館があるのですね~。そこに行けば柳田国男の世界を知ることが出来るのですね。
岩手には宮沢賢治資料館もあると聞いてます。わが合唱団は彼の作品をいくつか歌いましたので、何時か訪ねてみたいです。
自分に厳しく人にやさしい人柄も窺えるような気がします。。
遠野物語には色々と不思議な話がありましたよね。
馬に恋したオシラサマの話も興味深い話でしたよね。
遠野市内にはまだまだ物語の舞台となる場所があるので、また次の機会にじっくりと回ってみたいと思っています。
遠野物語は多くの方が読まれておられるようですが、だいたいはかなり昔のことのようで、私も学生時代に読んで以来30年ぶりに再読しました。そうしたら是が非でも遠野を訪れたくなって今回初めて訪れてみた次第です。「とおの物語の館」や「遠野市立博物館」はとても勉強になる施設です。ただこれらの施設を見学しているだけで一日は費やしてしまうので、日帰りでは色々と無理が生じてしまいました。遠野市内には物語の舞台となった場所が随所に現存しているので、また機会を作って訪れて回ってみたいと思っています。
今年5月には花巻市を訪れました。そちらは宮沢賢治の故郷です。花巻も楽しかったですよ。花巻もまた訪れてみたいと思っています。
河童釣りのキュウリの仕掛け、ユニークですね。
キュウリではなくスイーツだったら、きっと私が手を伸ばしていると思います(笑)
昔話蔵はそのお友達にぴったりかも知れませんね。
生のキュウリも味噌漬けて食べると美味しいですよ(笑)